割れ問特集 C問題編
いよいよ総論の割れ問です。また輸液の問題が出てきます。
112C4
末梢静脈路から1Lの維持輸液製剤( 電解質組成: Na+35mEq/L、K+20mEq/L、Cl―35mEq/L)を投与する際、この製剤に追加できるカリウムの最大量(mEq)はどれか。
a 2
b 4
c 20
d 40
e 200
解答
c
輸液でのK濃度の上限は40mEq/Lである。
40mEq/Lより濃いKを入れると血管痛が出てしまう。
ちなみに、カリウムに関しては上限が20mEq/L/hr・100mEq/L/day
という数値も覚えておきましょう!
112C21
尿路および男性生殖器の解剖について正しいのはどれか。 2つ選べ。
a 精管は鼠径管を通過する。
b 尿道は陰茎の腹側を走行する。
c 尿管口は膀胱頂部にみられる。
d 尿管は総腸骨静脈の背側を走行する。
e 上膀胱動脈は外腸骨動脈から分枝する。
解答
ab
陰茎は小帯(俗にいう「裏スジ」)がある方が腹側である。
お腹をくすぐられたらくすぐったいように、陰茎も腹側が弱点なのである。
よって尿道は陰茎腹側。
精管は鼠径管内を通過し、尿管口は膀胱底(膀胱三角)にある。
尿管は総腸骨静脈の腹側を通り、上膀胱動脈は内腸骨動脈より分岐する。
112C22
我が国において主要な曝露源が魚介類摂取であるのはどれか。 2つ選べ。
a 鉛
b メチル水銀
c カドミウム
d ダイオキシン類
e ビスフェノール A
解答
bd
鉛はヘモグロビン合成を阻害するために血液塗抹標本上では有核赤血球、好塩基性斑点が認められ、貧血を呈する。急性中毒では嘔吐、腹痛、ショックなどを示し、慢性中毒では主に消化器症状、神経症状が認められる。塗装工場で塗料の吸引により起こる。
メチル水銀は脂溶性の物質であるため生物濃縮を受けやすい典型的な毒物である。そのため、食物連鎖の高次を占める捕食者に高度に濃縮されて蓄積される。メチル水銀はまずプランクトンの体内で濃縮される。プランクトンから小魚、より大きな魚と順次に捕食され、それらの体内でメチル水銀はさらに濃縮されることとなる。生体内からのメチル水銀の排出は遅いため、生体蓄積の程度は高くなる。大きな肉食魚の場合、小魚の100倍ものメチル水銀を保持することになる。これにより最終捕食者の人間等に水俣病が発生した。メチル水銀への曝露によって中毒となった場合、主に中枢神経系が障害され、「メチル水銀中毒症」が病名となる。ただし、同物質による公害によって引き起こされた、すなわち公害病と認定された場合は特に「水俣病」(英語: Minamata disease)と呼ばれる。公害病では環境に排出されたメチル水銀が食物連鎖によって生物濃縮され、それを経口摂取することで発症するが、妊婦が摂取した場合、胎盤を経由して胎児にも影響し、(先天的に)同様な障害を持つ児が生まれることがある。この場合は「胎児性水俣病」と言う。また、主に腎臓が障害される無機水銀中毒症、あるいは、企図振戦、歯肉炎・口内炎、精神症状が3大主徴の金属水銀中毒症も、病態が異なるため「水俣病」とは呼ばない。
カドミウムの毒性については、骨や関節が脆弱となるイタイイタイ病が大きな社会問題となった。イタイイタイ病はカドミウムによる多発性近位尿細管機能異常症と骨軟化症を主な特徴とし、長期の経過をたどる慢性疾患を発症する。カドミウム汚染地域に長年住んでいてこの地域で生産された米や野菜を摂取したり、カドミウムに汚染された水を飲用するなどの生活歴による。さらに、慢性毒性では、肺気腫、腎障害、蛋白尿が見られる。腎障害では糸球体ではなく、尿細管が障害を受けると言われている。また、カドミウムは発ガン性物質としても知られている。これらの毒性の一部は、亜鉛と類似の生体内挙動を示すことから、亜鉛含有酵素のはたらきを乱すことによるものと考えられる。
ダイオキシン類は消化管、皮膚、肺より吸収されることが判明しているが、一般的な生活状況では日常生活におけるダイオキシン類の総摂取量のほとんどは経口摂取によると報告されている。日本近海についてはアナゴ、カニ類の内臓など、また遠洋・輸入のマグロなどから相当濃度のダイオキシン類が検出されている。また、魚の油にダイオキシン類が多く含まれている。日本近海のイカ類、底存性サメ類、タラ類の肝臓部にダイオキシン類が高いという報告もある。
ビスフェノールA (bisphenol A, BPA) は化学式 (CH3)2C(C6H4OH)2 の有機化合物である。白色の固体であり、有機溶媒に溶けるが水には溶けにくい。一般には粉体であり、粉塵爆発を起こすことがあるため扱いに関して注意が必要。2つのフェノール部位を持っており、ポリカーボネートやエポキシ樹脂をはじめ、さまざまなプラスチックの合成に使われている。ビスフェノールAを摂取するとエストロゲン受容体が活性化されて、エストロゲン自体に類似した生理作用を表す。
112C30
78歳の女性。夕食後に腹痛が出現し、次第に増強したため救急車で搬入された。
43 歳時に卵巣嚢腫摘出術を受けている。体温38.0 ℃。心拍数 120/ 分、整。血圧116/66mmHg 。Sp02 98%( 鼻カニューラ 1 L/ 分酸素投与下)。腹部は膨隆し、下腹部に圧痛と筋性防御とを認めた。腹部造影 CTで絞扼性イレウス及び汎発性腹膜炎と診断され、緊急手術を行うことになった。手術室入室時、体混38.0 ℃。心拍数 124/ 分、整。血圧 90/54mmHg 。SpO₂100%(マスク 6L/ 分酸素投与下)。麻酔導入は、酸素マスクによって十分な酸素化を行いつつ、静脈麻酔薬と筋弛緩薬とを投与後、陽圧換気を行わずに輪状軟骨圧迫を併用し迅速に気管挿管を行う迅速導入とした。
青字に示すような麻酔導入を行う目的はどれか。
a 誤嚥の防止
b 気胸の予防
c 舌根沈下の予防
d 声帯損傷の回避
e 食道への誤挿管の回避
解答
a
外傷患者などで緊急opeとなった場合、患者はフルストマック(胃内容物が逆流して誤嚥しやすい状態)であると考える。この時に迅速導入(クラッシュ導入)が用いられ、作用時間が早い筋弛緩薬を使って素早く挿管する、といったことが行われる。
フルストマックの要因
1. 患者要因 絶飲食不十分(食後6時間以内)、外傷、消化管閉塞、糖尿病、妊婦、重症肥満、麻薬使用中など
2. 手術要因 上腹部手術、砕石位、頭低位など
3. 麻酔要因 いわゆる浅麻酔、長時間手術
4. 器具要因 不適切な位置に留置された声門上器具
迅速導入(rapid sequence induction: RSI)は、「前酸素化 ⇒ 麻酔導入薬と筋弛緩薬を同時に急速投与 ⇒ 輪状軟骨圧迫を併用し、マスク換気は行わない ⇒ 直視型喉頭鏡で気管挿管」という一連の流れである。 RSI は逆流と誤嚥を100%防ぐものではないが、その危険がある患者の麻酔導入法としては標準的手法として教育されるべきである、とされている。
112C57-59
63歳の女性。結腸癌のため開腹手術が予定されている。
現病歴: 2か月前に受けた健診で貧血と便潜血反応陽性とを指摘された。2週間前の下部消化管内視鏡検査で上行結腸に腫瘤を認め、生検で大腸癌と診断された。胸腹部CTで転移を認めなかった。上行結腸切除術が予定されている。労作時の息切れや胸部圧迫感、動悸、腹痛、便秘、下痢および体重減少を認めない。
既往歴: 45歳ごろから、高血圧症と糖尿病のため内服治療中。
生活歴: 営業職で外回りをしている。ゴルフが趣味で現在も続けている。喫煙は20本/日を40年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴: 父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。
現 症: 意識は清明。身長155cm、体重62kg。体温36.2℃。脈拍84/分、整。
血圧154/84mmHg。呼吸数18/分。Sp0296 % (room air)。眼瞼結膜は貧血様であり、眼球結膜に黄染を認めない。表在リンパ節を触知しない。頸静脈の怒張を認めない。頸部で血管雑音を聴取しない。胸骨右縁第2肋間にてⅢ/Ⅳの収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。
検査所見: 尿所見:蛋白1+、糖(一)。血液所見:赤血球410万、Hb10.8g/dL、Ht34%、白血球6,400、血小板24万、PT-INR1.0(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン0.3mg/dL、AST 26 U/L、ALT32 U/L、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖116 mg/dL、HbA1c6.6%(基準4.6~6.2)、総コレステロール204mg/dL、トリグリセリド180mg/dL、HDLコレステロール46mg/dL、Na138mEq/L、K4.4mEq/L、Cl102 mEq/L。CRP0.3 mg/dL。胸部エックス線写真と心電図とに異常を認めない。
C57
術前検査として行うべきなのはどれか。2つ選べ。
a 頭部MRI
b 心エコー検査
c 呼吸機能検査
d 運動負荷心電図
e 75g経ログルコース負荷試験
C58
手術室入室後、皮膚切開までの間に行うべきなのはどれか。2つ選べ。
a 剃 毛
b 抗菌薬投与
c タイムアウト
d 肺動脈カテーテル挿入
e インフォームド・コンセント取得
手術後の経過: 手術は問題なく終了した。術後4日目早朝の体温は37.5℃であった。意識は清明。脈拍88/分、整。血圧124/70mmHg。呼吸数20/分。SpO₂96%(room air)。呼吸音に異常を認めない。腹部に圧痛を認めない。手術創周囲に発赤と腫脹とを認めない。肋骨脊柱角に叩打痛を認めない。2時間後に再測定したところ、体温は37.0℃であった。術後4日目の朝の血液検査では、Hb9.4 g/dL、白血球6,800、CRP1. 7 mg/dLであった。胸部エックス線写真で異常を認めない。
C59
この時点での対応として適切なのはどれか。
a カルバペネム系抗菌薬投与
b 下部消化管内視鏡検査
c 試験開腹手術
d 全身CT
e 経過観察
解答
C57
bc
術前検査として心機能、呼吸機能の評価が必要である。OGTTはすでに糖尿病と診断がついているため不要である。運動負荷心電図は労作性狭心症の検査である。
C58
bc
手術室での剃毛は感染のリスクをあげるため行わない。切開前および切開中に抗菌薬投与を行う。また、手術直前にタイムアウトを行い医療事故を防ぐ。ICは手術室に行く前に余裕を持ってとっておく。
C59
e
術後、発熱があるが感染の所見は見られない。2時間後には体温も下がりつつあり、出血や感染の兆候は見られない。よって経過観察である。
112C66
ある患者の動脈血ガス分析(room air)のデータを示す。
pH7.40、PaCO₂36 Torr、PaO₂79Torr。
肺胞気-動脈血酸素分圧較差〈A-aDO₂〉を求めよ。
ただし、小数点以下の数値が得られた場合には、小数第1位を四捨五入すること。
解答
26
肺胞気動脈血酸素分圧較差 : A-aDO2
A-aDO2 = PAO2 – PaO2 = PiO2 – PaCO2/0.8 – PaO2
room airはFiO2 21%
(760-47)×0.21 – 36 / 0.8 – 79 = 25.73
四捨五入より26である。
また、room air の場合、A-aDO2 = 150 – PaCO2×1.25 – PaO2 と簡略化できる。