小論文はあなたの“育ち”を見る試験です
順天堂大学の筆記試験はレベルが高いです。成績優秀な生徒が毎年たくさん入って来ます。しかし、順天堂大学が欲しいのは成績だけが優秀な生徒ではなく、育ちが良くコミュニケーションがきちんとできる人間なのです。
コミュニケーションは面接で見られます。育ちの良さは小論文で見られるのです。
順天堂大学医学部小論文試験の概要
まずは順天堂大学医学部の小論文の概要について。
配点と時間
一次試験にて、絵、写真、詩などを読み、設問に対する自分の考えなどを述べる問題が出題される
試験時間:70分 800字
出題方針
特に明記されていません。
出題傾向
順天堂大学医学部の小論文では例年短い文や絵についての質問があります。それは一見どう答えていいか分からないユニークな設問です。
順天堂大学医学部で過去出題されている内容を見ると、出題者が紋切り型の小論文では満足しないことが分かります。あえて、意図の読めない設問を付け、想像力と発想力とそこから現れる人間性を量られています。
こうすれば受かる!書き方テクニック!!
ではそんな小論文試験で一体どうすれば高得点が取れるか、そのポイントを説明します。ポイントは3つです。
- 見えているものを何かに例える
- 見えないものを想像する
- 話の結論をしっかりと書く
たったこれだけで相当評価の高い小論文が作れます。では次の問題をもとに解説します。
問題文
キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい。
[2015年 順天堂大学]解答例
階段の途中に二つの風船がある。男は足元もしくは手元を見つめながら、一段一段、階段を上っている。男はその鮮やかな赤色の風船に気が付いたとしても、その存在に気を止めず、階段を昇って行ったのかもしれない。
病気の兆候とは、時として件の風船のようにあっさりと無視してしまうのかもしれない。後から振り返れば、簡単に分かるはずのこともあるだろう。又は客観的に考えれば、目の前の事ばかりに集中していなければ、と後悔する人も多いであろう。
我々は自分自身の体から表れる病気のサインを見逃してはならない。明らかな違和感や痛みを伴うにもかかわらず、目の前の雑務に追われそれを見ぬふりをしてはならない。心身の状況と向き合うために我々は日ごと心と時間に余裕をもてる必要があるのだ。
現代社会では、人々は自らの心身と向き合えるほど余裕をもってはいない傾向にある。隙間の時間もスマートフォンをいじることで奪われ、日々の仕事に忙殺されている。明らかな違和感があっても気づかぬふりをしていた方が楽で、一時的に現在の生活を邪魔されず維持できる。
風邪を引いてるかなと感じても、「心の持ちよう」と言って不調を敢えて意識しないよう努めているケースがある。確かに、意識を外に向ければ、知らないうちに不調がなくなることもある。しかし、風邪が長引いたり、ずっと咳が止まらないなど、極端な症状になれば、早めに受診をするべきだ。何が原因かが分からない場合は、総合診療科から受診するのがいいだろう。
この絵のような誰が見ても分かる鮮やかな風船の横を通り過ぎても、目の前の事に集中してその存在を無視しまう事がある。これは現代人が日々の雑務や娯楽に身を投じ過ぎで明らかな心身の不調を見過ごす事と類似している。ここから言えることは、我々は日々の雑務や娯楽に心をとらわれ過ぎず、自身の心と体に向き合える余裕と機会を作ることの必要性である。
①見えているものを何かに例える
まず、何が見えていますか?
・階段
・手すり
・トンネル
・風船2つ
・電灯
・黒い服の男
ですね。これらを何かに例えて、うまくストーリーを作っていきましょう。こじつけでも構いません。説得力のある、矛盾のない、一貫した話を作りましょう。
医学部入試なので解答例では病気の話をしていますが、医学部にこだわらず、社会問題、日常生活、友人関係など身の回りのことに関して書くと話が膨らみやすいです。日頃から社会問題については情報収集しておくことをお勧めします。
②見えないものを想像する
次に、見えないものを想像します。
・階段の向こうには何があるのか
・階段の手前には何があるのか
・誰が風船を手すりにくくりつけたのか
・男はどういう表情をしているのか
・男はなぜ黒い服を着ているのか
・男はなぜうつむいているのか
などなど、あげるときりがありませんが、①でつくったストーリーに肉付けできそうな物を選びます。そして、話を膨らませて行きます。
解答例だとこの男は歩きスマホがゆえにうつむいている、となっています。
③話の結論をしっかりと書く
①②と、話を膨らませて来ましたが、このままだとまとまりません。ここまで書いている間に、あなたが本当に言いたいことが見つかると思うのでそれに関してうまくまとめましょう。
解答例だと、現代人の健康のあり方についてうまくまとめています。
このように①〜③の手順を踏めば誰でもうまく小論文を書けるようになっています!
それでは、以下の過去問で練習してみてください。
過去問一覧
2017年 過去問
「兵士から食事を与えられている子猫になったとして感じるところを述べる」
2016年 過去問
「Vivian Maierが撮った1950年代のアメリカの写真です。彼の前にはどのような世界が広がっていると思いますか。800字以内で述べなさい」
2015年 過去問
「キングス・クロス駅の写真です。あなたの感じるところを800字以内で述べなさい。」
2014年 過去問
「この写真は、写真家HABU氏の『自分の物語』という写真集からの一枚です。『心の秘境』という題がついています。あなたは、この写真を見て、そのように思うかを800字以内で述べなさい」
2013年 過去問
「『2頭のエクスムア種の子馬 イギリス 1992年』の絵には、イギリスのサマセットの丘を風景に、2頭の子馬が全く同じポーズで佇んでいる。この静寂を何かにたとえて800字以内で述べなさい」
2012年 過去問
「W. Eugene SmithによるThe Walk To Paradise Gardenと題された写真です。男性は写真右の男の子に、女性は写真左の女の子になったと仮定して、彼らは何を考え、これからどこに行こうとしているのか、800字以内で述べなさい」
2011年 過去問
「この絵は、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえたM101銀河です。地球から2500万光年離れた銀河です。この絵から思うところを800字以内にまとめなさい」